油脂の酸化について教えてください。


油脂性食品は長期にわたって保存しておくと、空気中の酸素、湿気、熱、光、金属イオン、微生物あるいは酵素などの作用によって、 不快な臭いを発し、味が劣化してしまいます。油脂成分が変化した食品は栄養価値が低下し、さらに酸化が進むと毒性を示すようになります。これらの油の劣化現象を酸敗あるいは変敗と呼んでいます。
油脂の酸敗には空気中の酸素による酸化型酸敗(アルデヒト型酸敗ともいう)のほかに麺かびや青かびなどの微生物の作用による加水分解型酸敗(油脂酸型酸敗ともいう)とケトン型酸敗があります。後者の二つは酸化型酸敗に比べると起こりにくいです。油脂を空気中に長期間放置しておくと、油脂中の不飽和脂肪酸が酸素を吸収して不安定な過酸化物(パーオキサイド)を生じ、これが転位して、不飽和のハイドロパーオキサイドを生じます。これらの一連の現象を自動酸化と呼びます。

油脂の酸化は、酸素、温度、水分(湿度)、食品のPH、金属イオン、光などによって影響を受け、これらの要因の一つでも軽視することがあれば、酸化による事故発生の危険性が生じます。

1.酸素の影響
油脂の酸化に対して影響が最も大きいのは空気中の酸素です。空気中には約21%の酸素が含まれており、我々の生存には不可欠のものですが、食品の保存には迷惑な存在です。この酸素が油脂と結合して酸化反応を起こします。一般には、空気中の酸素濃度で十分に酸化は進行します。したがって、包装資材に酸素透過度の非常に低いフィルムで密封したとしても、袋内に十分な空気があれば、酸化防止の目的はほとんど果たせません。包装で酸化防止をするには、食品の雰囲気中から酸素を除去することが必要で、一般には真空包装、ガス置換包装、脱酸素剤封入包装などが行われます。食品の表面積によっても酸化速度は異なり、酸素と接触する部分が大きければ大きいほど酸化速度も大きくなります。凍結乾燥食品、粉末状食品、スポンジ状食品などでは特に注意が必要です。表面積が大きい場合は、0℃以下に保存してもかなり酸化は進行します。冷凍食品の油焼けなどがその例です。

2.温度の影響
油脂の酸化速度は、温度が高いほど大きくなります。一般には、10℃上昇するごとに反応速度は2倍になるといわれています。したがって、製造工程における加熱条件、販売経路における温度管理も大きく影響します。加熱による油の変化は大きく、製造工程における加熱温度、時間、新油・終油の品質チェックなどには特に注意が必要です。酸化による事故の中で、この原料油の品質劣化が原因となることが非常に多いのです。劣化油を使用することにより、商品寿命が著しく短縮してしまいます。

3.水分の影響
食品にはそれぞれ適切な水分含量というものがあり、それより多くても少なくてもその食感は低下します。同じように、油脂の酸化についても、最も酸化しにくい水分含量というものがあります。例えば凍結乾燥食品では、脱脂粉乳2.98%、チキンスープ1.18%、牛ひき肉6.19%などで、これらの水分含量が油脂の酸化防止のために最も適切であるとされています。これは、食品に対してその表面に水分が単分子層吸着し空気との接触を阻止することによるものです。乾燥食品が吸湿することによって、官能的な酸化の影響が大きくなります。つまり、吸湿と酸化が共存すると品質劣化がより一層ひどく感じられるようになります。

4.金属イオンの影響
油脂性食品の酸化を促進させる金属イオンとしては、銅、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、コバルトなどで、酸化触媒として作用します。銅の場合0.01ppm、鉄で0.1ppm程度の混入でも強く影響するため、前処理、製造、保存などの過程において、金属類との不必要な接触は避けた方が良いでしょう。また、原料や用水のチェックも重要な項目です。金属イオンが触媒となった場合は酸化の進行速度が非常に大きくなり、事故が起こりやすくなります。

5.光の影響
太陽光線、蛍光灯などの光線も酸化を促進する大きな要因です。真空包装やガス充填包装でも、光照射によって酸化防止効果がほとんどなくなってしまうほど、大きく影響を与えます。太陽光線はいろいろな波長の光の集まりです。一般に、紫外線のように、波長が短い光ほどエネルギーが大きく、強く酸化を促進します。可視光線も光量がありエネルギーも比較的大きいので、十分に酸化を促進します。

<酸化の測定と評価>
油脂または油脂性食品の酸化程度を調べる方法として、過酸化物価(POV)および酸価(AV)がよく用いられます。
POVは、油脂の酸価の初めに生ずるハイドロパーオキサイドの含量をヨウ素滴定法によって測定するもので、初期段階の酸敗度を判定する指標として広く用いられています。単位はmg当量/kgです。この数字が大きいほど酸化が進んでいます。
AVは油脂の劣化を示し、揚げ油の熱劣化の程度がわかります。数字が大きいほど劣化が進んでいます。

<油の酸化に関する法規制>
・即席めん類(油揚げ麺)について、めんに含まれる油脂の酸価(AV)が3を越え、又は過酸化物価(POV)が30を越えるものであってはならない。
・油で処理した菓子(油脂分10%以上)では、POVが30以下で、かつ、AVが5以下であること、または、AVが3以下で、かつ、POVが50以下であること。
「油菓子」とは、油脂で処理した菓子で、油脂分を粗脂肪として10%(重量%)以上含むものを示し、厚生省通達(環食第248号)での「油で処理した菓子」と同義語として使用します。油で処理した菓子とは、製造過程において、油脂で揚げる若しくは炒める又は油脂を吹きつける若しくは塗布する等の処理をほどこした菓子をいいます。具体的にはバターピーナッツ、フライビーンズ、ポテトチップス、クラッカー、クッキースナック菓子、あられ、せんべい、かりんとう、イカフライなどです。

<包装による油の酸化防止方法>
まず、原料油の種類選定や品質管理が最も重要ですが、包装との関連では、袋内の酸素を除去する真空包装、窒素ガス充填包装、脱酸素剤封入包装などの技術があり、なかでも、フイルムを透過してきた酸素も吸収する脱酸素剤封入包装、あるいは、脱酸素剤封入包装とガス充填との併用が最も効果があります。またアルミ箔、アルミ蒸着フイルム、印刷での遮光包装も重要で、酸化防止、変退色防止、香気保存などで効果があります。